証券化によって不動産の流動性が拡大

不動産ビジネスの歴史には、二つの大きな転換点が存在します。第1のポイントは2000年代初頭の「不動産証券化市場の拡大」です。かつて不動産ビジネスといえば、不動産会社や土地所有者による住宅やオフィスビル、商業施設の開発や売買がその中心を占めていましたが、不動産の証券化が進展したことによりこの伝統的な業態に一定の構造的な変化が生じました。不動産ビジネスにおいて分業化、専門化が進み、また他方で不動産の所有権や賃料債権などについては信託等を利用した証券化スキームにより細分化して有価証券に換えて売買を行うことができるようになったため、不動産取引の流動性が飛躍的に高まりました。そうして、不動産市場には機関投資家からだけではなく不特定多数の個人からも多額の資金が流入するようになったのです。

 

不動産証券化の代表例はREIT(不動産投資信託)です。REITは投資家から集めた資金でオフィスビルや商業施設、ホテルなどの不動産を運用し、その賃料収入などを投資家に分配する金融商品です。アメリカで1960年代に生まれ、1990年代に急拡大しました。 日本では2001年9月に最初の不動産投資法人が東京証券取引所に上場しました。日本におけるREIT(J-REIT)は日本で不動産と金融が融合した創生期の金融商品であり、不動産証券化の開始は「不動産×金融」という新しい世界の幕開けを意味していました。

ITの発達が引き起こした構造変化

そして第2のポイントが、不動産取引における「IT利用の拡大」です。 すでに1990年に不動産情報の共有化・標準化を目的にREINS(不動産流通標準情報システム、レインズ)というコンピューターネットワークシステムが稼働を開始していましたが、このサービスを利用できるのは不動産会社などに限られていました。また不動産会社はそれぞれ自社ホームページを持つことが普通になりましたが、それは自社物件に顧客を誘導するツールにすぎず、掲載された各種の情報も限られていました。

こうした閉塞感の強い状況のなか、2010年代に急速に高度化したIT技術の波が不動産業界にも入ってきました。いわば不動産テックの黎明期といえるでしょう。IT技術の発達により、ITは単なる情報の「収集」や「発信」のためのツールではなく、一般の方と不動産会社などを近づけるツールとなり、さらには新たなサービスを誕生させ、そして、一般消費者が不動産市場へプレーヤーとして参加できるプラットフォームへと変貌を遂げてきています。

不動産テックはFintech(フィンテック)に誘導される形で、世の中に広がったと言えるかもしれません。

 

近年、IT技術の高度化により専門家とそうでない人の情報格差が縮まり、アパートオーナーを目指す投資家と不動産会社などが保有する物件情報をマッチングするサイトや公的不動産(PRE)についてのポータルサイトがスタートアップしています。また、賃貸物件におけるIT重説(重要事項説明のオンライン化)やVRによる内見等が現実のものとなり、消費者の利便性のみならず業界の業務効率向上という側面においても、不動産取引におけるIT活用は今後益々拡大していくことと考えられます。

 

不動産投資にクラウドファンディングの手法を導入

私たちが2014年にスタートさせた「OwnersBook」も、ITを利用した画期的な取り組みと自負しています。 「OwnersBook」はクラウドファンディングの手法を用いて少額からの不動産投資を可能にし、一般の個人投資家に資産運用の新たな選択肢を提供しました。

 

「OwnersBook」は自社開発により生み出され、常に成長を続けています。投資家の皆様に簡単、かつ、安心してご利用いただけるよう、日々更新と改良が行われています。スマートフォンサイトやアプリで会員登録や案件取引、SNS機能による投資家同士のコミュニケーションが可能であることに加え、日々ユーザーエクスペリエンスの改善や利便性向上に努めています。不動産取引におけるITの役割は、取引の透明性と効率性を高めること。私たちは「OwnersBook」の利用者拡大を通じて「不動産× 金融×IT」の経営ビジョンを追求し、日本における不動産投資の活性化を目指していきます。

Visionary Members

成田 洋
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成田 洋

成田 洋

取締役

(CFA協会認定証券アナリスト,

ビル経営管理士,不動産証券化協会認定マスター)

川畑 拓也
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川畑 拓也

川畑 拓也

取締役

(公認会計士、不動産証券化協会認定マスター)